鋼管杭は工場で厳格な品質管理のもとに製造された製品であり、その強度、品質信頼性から、橋梁・港湾・建築構造物をはじめ、あらゆる構造物の基礎杭として、広く採用されてきましたが、これまで、鋼管杭工法においては、統一した施工管理資格はなく、各種開発された国交省大臣認定工法、審査証明工法ごとに、施工・施工管理の講習会等により、施工管理者を育成・運用してきたところであります。
①地震など頻発する自然災害に対して、インフラ、ビルなどを支える杭などの基礎構造物の信頼性向上を図るため、道路橋示方書等の公的な技術基準において、杭の施工・品質管理の厳格化が図られたこと。
②国交省において、平成28年3月の「建設業法施行規則」の一部改正で、優秀な技術者に活躍の場を広げる観点から、民間資格の合格者を主任技術者として位置づけることが規定されたこと。
上記状況を踏まえて、平成28年度から、鋼管杭の施工に関係する(一社)鋼管杭・鋼矢板技術協会(以下、JASPP)、(一社)全国基礎工事業団体連合会(以下、全基連)、及び(一社)全国圧入協会(以下、JPA)の3協会は、鋼管矢板を含む鋼管杭工法全体の統一した施工管理資格について検討を進めてまいりました。
杭の施工の専門性と地中部の杭の品質確認の困難性を鑑み、鋼管杭施工の知識及び技術の普及と高度な能力を有する施工管理者の育成を図るため、平成30年度より、新たな鋼管杭の資格試験制度を下記の要領で実施することにしました。
今後、国交省の登録試験制度への申請を視野に本資格の普及に取り組んで参ります。
鋼管杭施工管理士資格制度の概要
1. 資格の名称
「鋼管杭施工管理士」
2. 資格の位置付け
鋼管杭・鋼管矢板の適正な施工及び施工管理を行うために必要な知識・技術の保有者「エキスパート」であることを認定する資格
(鋼管杭の施工において、必須の民間資格になることを目指す)
3. 想定する資格対象者
①鋼管杭施工会社の「杭工事管理者」を含む技術者、技能者
②基礎に関わる発注者、設計者、元請技術者等(鋼管杭施工技術向上のために、この資格を取得することを推奨する)
4. 検定試験
(1)実施時期
①「鋼管杭施工管理士検定試験」(以下、検定試験)を平成30年度から毎年1回実施
②試験、合格証発行時期
試験実施:各年11月第3日曜日(合格証発行:各年1月(予定))
(2)実施場所
4箇所(仙台、東京、大阪、福岡の予定)で実施
(3)試験科目・問題と時間
①試験科目は建設業法施行規則の「登録基礎ぐい工事試験」を参考とした科目。
②試験問題構成は四者択一式(基本問題、施工・施工管理問題)と記述式
③試験時間は3時間
(4)合格基準
全体として6割以上(ただし、試験項目ごとに足きりあり)
5. 検定試験の運営組織
①検定試験問題作成・合否判定、試験運営組織はJASPP、全基連、JPAから独立した組織とし、名称は「鋼管杭施工管理士検定試験委
員会」(以下、試験委員会)
②試験委員会委員は建設業法施行規則に定める「登録基礎ぐい工事試験」の委員構成を参考にした委員(地盤工学または基礎杭の有
識者2名以上を含む10名以上の委員)
6. 受験資格要件
表-1に示す基礎工事の施工に関わる実務経験年数
7. 資格の認定
検定試験合格者の申請により、試験委員会名で「鋼管杭施工管理士」の認定証を発行
8. 資格の更新
資格の有効期間は取得から5年間とし、その最後の年の更新講習の受講により更新
表-1 基礎工事の施工に関わる実務経験年数
学歴 | 実務経験年数 | 実 務 経 験 | |
指定学科 | 指定学科以外 | ||
大学 | 1年6ヶ月以上 | 2年6ヶ月以上 | 基礎工事に関わるすべての職務経験注)をいう。ただし、基礎工事には鋼管杭または鋼管矢板工事1件以上を含むものとする。 なお、基礎工事の職務経験があっても鋼管杭または鋼管矢板工事に関わる職務経験がない場合には、鋼管杭の施工管理に関する技術講習の受講(過去5年間で1回の受講)をもって鋼管杭または鋼管矢板工事の職務経験を有すると見なすものとする。 注)基礎の設計施工、施工管理等(補助者としての経験も含む) |
短期大学・高等専門学校 | 2年6ヶ月以上 | 3年6ヶ月以上 | |
高等学校 | 3年6ヶ月以上 | 5年6ヶ月以上 | |
その他 | 8年以上 |
*:指定学科とは、土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、海洋土木を含む)、建築工学、機械工学、都市工学、建設工学、建設基礎工学、電気工学、地学、地質学、資源工学、衛生工学、交通工学、安全工学、環境保全工学、計測工学などの理工系学科
**:鋼管杭の施工管理に関する講習会としては「鋼管杭施工管理技術者育成講習会」があります。